【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2018年10月28日

「 ろくでもない素晴らしい世界 」

「この惑星では、かつて関ヶ原という戦いがあったらしい」ではじまる最近のBoss 缶コーヒーCM。サングラスをかけた徳川家康演じるタモリ氏や、石田三成演じる能楽師・野村萬斎氏が登場し、裏切り/寝返りで「敵ってどっちだっけ?むちゃくちゃだぁ」と大混乱の中、必死に走りまわる足軽達。そこに突然登場するのが侍姿の宇宙人トミー・リー・ジョーンズ氏であり、「この惑星では、本当に働いている人が一番疲れる。ろくでもない、素晴らしい世界」というメッセージで閉じる。まるで訳がわからないような場面設定であるが、思わず同感し微笑んでしまうから不思議なCMである。

以前、この「天の窓」でも、最近多いシリーズCM について書いたが、このBoss 缶コーヒー宇宙人トミー・リー・ジョーンズシリーズは、2006 年に初めて登場して以来12 年に渡る超長寿CMシリーズである。この次元が異なるCM のいったい何がこれほど長く日本人の心を捉え続けたのであろうか。映画JFK や逃亡者でハードな役を演じてきた強面(こわもて)俳優で知られるトミー・リー・ジョーンズ氏が、何故に日本のCMでこのような滑稽な役を演じるのか?このCMを最初に見た時、私は信じられず目を疑った。トミー・リー・ジョーンズ氏は、苦学の末、奨学金でハーバード大英米文学科を卒業した秀才であって、大学寮のルームメイトは、後の副大統領アル・ゴア氏である。英米文学を極めたアメリカ人エリートがなぜ日本のCMでここまで意外な役を演じ続けるのかミステリーでもある。その理由を聞かれると「私は日本人が大好きだから」と至ってシンプルであった。そう、彼は日本のCMを高いギャラや名声の為に演じていたのではなく、日本人が大好きな自分自身を表現していたという。ここにこそ、このCMが12 年間にも渡って、私達の心を共振させ続けた理由があるのかもしれない。誰もが手にする僅か185g の缶コーヒーで「矛盾や不合理を甘受せざるを得ない日常や仕事の中に見出される素晴らしい世界を、ダメなところを含めて人を肯定する人生の価値観を共有し表現したい。この惑星はろくでもない素晴らしい世界である」というからこれはもはや哲学?やはり只者ではない宇宙人である!

神と神の国の素晴らしい価値観を世に伝える私達のメッセージである宣教や信仰も、たとえそれがどれほど素晴らしいCMであっても、演じていては長くは続かない。トミー・リー・ジョーンズ氏が日本をこよなく愛したように、私も神の国を熱く愛して、神の愛と赦しの温かい1杯を届けようではないか。