【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2019年2月17日

「バンクシーのキャンバス」

臨海線(ゆりかもめ)日の出駅付近でバンクシーらしき作品が発見された。数年前から存在していたと言うが、先月、東京都がこれを撤去して調査した。小池都知事のTwitterには「カワイイねずみの絵がありました。東京への贈り物かも」の書き込みと共に、都知事の写真が載って話題となった。そして先週「これは110%バンクシーの作品である」とニュースが告げた。

バンクシーは身元不明匿名ストリートアーティストで、世界中に170程の作品を残している。昨年、ロンドンオークションで140万ドル(1.2億円)の落札直後、仕組まれたシュレッダーで絵を裁断してニュースにもなった。

バンクシーは、イスラエルとパレスチナの分離壁に風船で壁を越えようとする少女を描いたように、反戦や分裂・分断へのメッセージ、権力者や資本主義への抵抗や批判が込められる故に「芸術テロリスト」とも呼ばれる。

牧師が、社会/政治的イデオロギーについて語る事はしないし、芸術と言え落書きは立派な器物破損罪である故にバンクシーを肯定する訳でもない。この「東京ねずみ」は築地から逃げて来たねずみではないかと言う人もいるが、彼の作品で、ねずみは労働者や難民等を表す故に、この都会で働く忘れられた人々の姿なのかもしれない。この作品も「通行止」と書かれた壁(防潮扉)の隅に薄く描かれている。これも私達の社会の格差や分裂分断に対する忠告・メッセージであろうか。

作品を撤収した東京都は、これを保管/展示しようと考えているようであるが、バンクシーの作品は、その残された街・場所が重要な額縁であって、作品の一部であるように思える。それを取り除いて絵だけを残しても、その価値は半減してしまうであろう。私達が生きる現代社会は複雑で多くの問題や歪を抱えているが、その原因のひとつが「余白」のなさではないかと思う。高速道路でも路肩がないと怖いのと同じで、心や人生も、余白(縁)がないのは危険である。心の余白(枠)がある神の作品となろうではないか。